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Extremely Loud & Incredibly Close(邦題:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い)



寡作なスティーブン・ダルドリー監督の待望の最新作、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を観てきました。
公式HPは → → → コチラ


少し具合の匙加減

私はこの映画を観るまで知らなかったが、Jonathan Safran Foerによる原作"Extremely Loud & Incredibly Close"は「9.11文学の最高峰」と呼ばれたりする、全米で大ベストセラーとなった小説だそうである。原著を読んだ方(あるいは、読んでいる方)はご承知のように、一言で云えばoffbeatな物語、そして語り口だ。ニューヨークを舞台にした、いかにもニューヨーカーが好みそうな話。それを映画化したのが、スティーブン・ダルドリー監督だった。当初、タイトルが面白い(ほぼ直訳だが、実に素晴らしい邦題!)というので珍しく妻がこの映画を教えてくれたのだが、トム・ハンクスにサンドラ・ブロックという少々時代掛かったキャスティングに私が難を示していた。しかし、調べてみたらダルドリー監督作品ではないか。ならば、観ること決定。と云うか、観ないでどうする?ぐらいの勢いだ。

いま読んでいる原作は、大胆なのに繊細で、洗練された都会のお伽話のような内容だ。原作では、話の本筋となるReconnaissance Expedition(字幕訳:調査探索ゲーム)と、主人公オスカー少年の祖父母のそれぞれの手記が交互に配された章立てになっている。映画版では専ら調査探索ゲームに焦点を絞り(半分ぐらい読了した時点で、かなり端折っていることが分かるが)、その顛末とオスカーが調査の果てに手にする結果を見せて終わる。さて、その調査探索ゲームであるが、これが少々ややこしい:9.11で敬愛してやまない父親を亡くした少年が、父の部屋で見つけた鍵にぴったり合う鍵穴(鍵の持ち主)を探してニューヨーク中を探しまわるというものである。持ち主は誰なのか?何のための鍵なのか?私たちはオスカーの奇妙な冒険(と呼んでよいほど、独特な調査手段だ!)に同行しながら、いつしか一緒に答えを求めていることに気付く。その「答え」をここで明かすわけにはいかないが、「まぁ、そういうものだよね」と呟いてしまうものである。しかし、それでもなお、私たちはひとつ前に進めた気持ちをオスカーと共有できるのではないかと思う。

ここまでだと、「はじめてのおつかい」みたいな話を想像される方も居られよう。そうではないというのが、本作(および原作)のレゾン・デートルであり、何よりスティーブン・ダルドリー監督がメガフォンをとるべき理由であると言いたい。何だか要領を得ず「存在理由?」と首を傾げられるのは当然のことだが、こればかりは百聞は一見に如かず、実際に観ていただくのが一番手っ取り早い。とてつもなく透き通っていて、感受性が人一倍強く(そのことが外見からすぐに見て取れる)、どこか違うと感じさせるオスカー少年を完璧に演じたトマス・ホーンを見出したのはダルドリー監督であるし、その意味では本作は監督にとっての原点回帰だとも言えるだろう(監督のデビュー作は、ジェイミー・ベルを発掘した『リトルダンサー』である)。

9.11(本作では"the worst day"と表現されている)が人々にもたらした喪失のリアリティと、現実では有り得ないフィクションが絶妙な具合で混ざった本作。ダルドリー監督のファンであるという個人的な理由を差し引いても、どの世代の方にも(久々にお子さんにこそ観てほしいと思った映画だ)、誰と一緒に観ても、それぞれの感じ方ができる地味な名作だと思う。「学校や仕事はどうしていたのか?」などという意地悪な現実問題はひとまず置いておいて、今日は心地よく物語に心まで浸ることにしよう。少し奇妙で、少し寂しくて、少し暖かい物語。私はそういう"少し具合"の映画が、しみじみ好きなのである。

| 映画レビュー | 23:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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