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(500) Days of Summer(邦題:(500日)のサマー)



『スパイダーマン』のリメイク版の監督に抜擢されたMarc Webbが気になったので長編デビュー作を購入してみたら、意外なヒットでした。
最近私のなかで筆頭注目株であるジョゼフ・レナード・ゴードン=レヴィットくんが主演というのも素晴らしい。


夏は秋へと続いていく

冒頭で語られるように、これは典型的な"Boy meets Girl"の話ではあるけれど、普通の(かつてメグ・ライアン主演で大量生産されたような)素晴らしすぎる偶然の積み重ねのみで成り立っているお気軽ラブストーリーではない。そうかと云って「ただの恋愛話にそこまでオシャレさや奇抜さは必要なのか?」と思うほどのハイ・センスぶりでもない。程よくセンスがあって、程よくほろ苦く胸キュン。その程よさは、私が好きな匙加減だ。

我らが主人公、トム・ハンセンは、グリーティングカード製作会社のコピーライター。本当は建築家になりたかったが、挫折している。幼少期にポップス音楽の描くロマンスの世界に浸りすぎ、映画『卒業』を拡大解釈しすぎて、自分にとっての"The ONE(運命のひとり)"がいると信じている草食系男子。そんなトムが、新しく会社に入ってきたサマーに一目惚れして、この女性こそがThe ONEだと確信する。しかし、サマーは幼少期の両親の離婚を機に大切だった自分の黒髪を切っても何も感じないと知って、いまでも恋愛というものを厄介なものだと考えている。そして、自分たちの関係にレッテルを貼ったり、定義付けをすることを極度に嫌っている。

この映画は、そんなふたりの500日間を時系列をランダムに描く(本作では、"THE XXX Day"と表示された後に、その日の出来事が語られる)。とは言っても起承転結が多少組み替えられている程度なので、基本的には"一途なトム"と"はぐらかすサマー"の恋物語を、友だち的傍観者の立場で眺めていけるはずだ。どこにでもある、何度もネタにされている、普通の話である。オチも、普通(青文字の標題の通り)。では、そういう数多とある恋愛話と何が違うのか?たぶん「時代の空気や感覚に合っている」ということだと思う:草食系男子が勝手気ままな女子に恋したり、友だちのリアルな生活を垣間見るSNS的な愉しみがあり、トムとサマーの関係性はどこまでも淡白で決してシリアスにはならない。そういうことが「ただ軽いだけ」なのかどうかは別として、いまの気分に合っていることは確かだと思う。もしかしたら、マーク・ウェブは、その時代の気分や感覚を切り取るのが得意なのかもしれない。このことは、リブート版スパイダーマンでも感じたことだ。

重要なのは、"その時代そのもの"を切り取っているのではないということであろう。それだと、ドキュメンタリーになってしまう。あるいは、流行しているファッションアイテムやトレンドを散りばめれば時代の空気を捉えているのかと言えば、それもちょっと違うと思う。私たちのリアルライフにはそのときどきで特有の空気や気分が流れていて、私たちは無意識のうちにそれを吸い込んで時代を共有している。本作は、その目には見えないが"判る"空気や気分を、上手に見せてくれるような小作品だった。こういう思いがけない伏兵(しかも滅多に観ない恋愛モノで!)が潜んでいるから、映画は最高に面白くてスリリングだ。しかし、ジョゼフ・レナード・ゴードン=レヴィットくんのドハマり具合が、格別に良い。私もこういう雰囲気を目指したい。

| 映画レビュー | 22:27 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

> invisible Aさん

自分の記事を読んで作品を手に取ってくださるのは
レビューをせっせと書いていて何よりもうれしいことです。

私もこういうお茶漬けのようにサラリと頂けて
でも胃のなかがじんわり満たされて温かくなる作品が好きです。
"朝からステーキ"的な、長大かつヘヴィーな作品も好物ですが。

私は『モテキ』未見ですが、あのダンスシーンは知っていたので
本作を観ながら「どちらが先なのだろう?それとも偶然なのか?」と思っていました。
なるほど、モテキの引用だったのですね。これは良いことを教えてもらいました。
『モテキ』もいつか、と思っているのですが、劇場専の悪しきところで
興味があっても劇場公開中に観逃すともう観ないということが多いのですよね。

| pltr0 | 2012/10/28 13:22 | URL | ≫ EDIT

このレビューで興味を持ち、僕も鑑賞しました。
その上であらためて読むと、
pltr0さんの表現が極めて的確であることに舌を巻く思いです。
だからこれ以上書くのは屋上屋を架すだけなのですが・・・。

イヤミがなくさらりと実験的で、「どうだセンスいいだろ!」と
押しつけがましくならない程度にセンスの良さが光っていて、
僕好みの90分台という短めの上映時間とあいまって、とても楽しめました。
恋に振り回される男の子(あえてこう書きます)の喜びと切なさがじわじわと伝わってきました。

ついでに、映画「モテキ」のパフュームと森山君のダンスの元ネタが、
これであることがわかって驚きました。
流れが完全にそっくりですよ。
どうやらモテキの監督も引用(?)を認めているらしいです。

| invisibleA | 2012/10/20 19:03 | URL | ≫ EDIT















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