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舞妓はレディ



周防正行監督の久々の新作、『舞妓はレディ』を観てきました。
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監督こそが、ヒギンズ教授

題名から察せられる通り、本作は名作"My Fair Lady"を下敷きにしたというか、リスペクトしたというか、パクったというか、ともかく言い方はどうでもよいとして、"鹿児島弁と津軽弁ネイティブ"という稀有な言語使用者である主人公春子が、言語学者の手を借りて舞妓になるまでのストーリーを描いたミュージカルである。周防監督がミュージカル映画を作ったとあらば、観ておかずにはおられまい。なお、本作はお芝居のなかで登場人物たちが唐突に歌い出す典型的なタイプのミュージカルである。ちなみに、主役の春子以外で歌声を披露するのは、長谷川博己氏(言語学者役)、草刈民代、渡辺えり、田畑智子(春子が入るお茶屋の芸妓、舞妓)、富司純子(お茶屋の女将)、高嶋政宏(芸能事務所社長)などであるが、全員手放しに巧いとは言えないものの、聴いているのが恥ずかしいほどでもないのでご安心を。

話は実にオーソドックである。ズブの素人が舞妓になるまでの過程は『舞妓Haaaan!!!』(宮藤官九郎作品)で語られていることもあり、本作で描かれる下積み修行の数々は未知の世界というほど珍しいことではない。相変わらず大学教員に対するイメージは古典的であるが(こんな若手でこんな研究室を持っているのは本作の京野先生か帝都大学の湯川先生ぐらいであろう)、起伏の少ないストーリーと登場人物たち、どこまでも上品で行儀のよい笑いのセンス、毎度奥様を強めにフィーチャーする愛妻家ぶりは、どうみても周防作品である。同時に、これは大ヒットにはならないだろうなぁとも思う(もしかしたら、現在公開していることすらご存じない方もいらっしゃるかもしれない)。言ってみれば周防作品は「草食系映画」の極みであり、二日酔いの翌朝のしじみ汁のような心と身体に優しい映画なのである。しかも、ミュージカル部分はアレンジ等に何のヒネリもない、『マイ・フェア・レディ』の劇中歌そのもので、観る人によっては退屈極まりない作品になると思う。

それでも私がちょっと勧めておきたいと思うのは、主役に抜擢された上白石萌音さん(キャリアは多少あるようだが、実質本作がデビュー作)の歌声を聴く価値があるからである。「名」と冠の付く名教師、名監督、名コーチと言った人たちに共通する才能は、未完の大器を見出す能力である。本作は、上白石嬢のフレッシュな(使うのがとても恥ずかしい形容詞だが、敢えて使おう)演技と類い稀なる歌声の魅力ただ1つだけで押し切っている映画で、私の経験で言うと、そういう無謀なことを成立させてしまう新人俳優はあまり多くはない。800名の中からたった1人の新人女優を見つけ出し、見事に才能を開花させ主演女優にまで育て上げた周防監督こそ、ヒギンズ教授だったのである。

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