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バケモノの子



細田守監督の最新作、『バケモノの子』を観てきました。
公式HPは → → → コチラ


もはや宗教、あとは伸るか反るか

蓮という名の少年の父親と母親は離婚していて、蓮を引き取った母親は不慮の交通事故で死亡してしまった。どうやら母方は裕福らしく、何不自由なく蓮を育てると祖父母がやってくるが、蓮は反発して渋谷でストリートチルドレンになる。そこで偶然バケモノの熊徹に出会い、ひょんなことからバケモノの世界"渋天街"で熊徹の弟子「九太」として暮らすことになる。ここまでが前置き。渋天街での成長や出来事、そして血縁もない(それどころか種族さえ違う)擬似的な親子関係がホンモノになる過程を描くのなら、充分に予想できて、それでもたぶん泣ける。

私の評価を先に述べておくと、細田監督の4作品のなかでは一番つまらなかった。でも、それは賛辞でもある。

なぜ退屈なのかは明確で、至れり尽くせりだからだ。あらゆる要素がてんこ盛りで、どこでワクワクしたり感動したりすればよいかを教えてくれて(意地悪に言えば誘導して)、理解不能なキャラクター、出来事、展開は一切なく、誰もが納得のハッピーエンドである。しかしそれは、細田監督が意図する見方以外を許さないということでもあると思う。賛否両論が起きない物語は、すなわち裏で"起きさせない"ようにしていることが多くて、それはもはや宗教と同じだ。先日、本作と細田監督を特集したNHKの番組を観たが「自由にやってよいというわけではない、正解はひとつ」と監督が発した言葉が映画を観るとよく分かる。感じ方さえ、これが正解だと分かりやすく教えてくれるが如しなのだ。それと同時に、その感じ方以外は許さないという無言の意志も感じる。そういう意志は過去の作品でも感じていたが、本作では個人的には恐怖を感じるレベルに達していた。

ここまでクソミソに書いておいて、手のひらを返すようにフォローするのも可笑しなことだが、これは賛辞でもある。ものすごい一本筋の通り方だからだ。裏を返せば、絶対にミスリードさせない、観客を迷わせない、映画を観て嫌な気持ちにさせないという強烈な意志でもある。そして、その通りの映画を作ってしまえるのだから、細田監督の目指しているものは半端なものではない。あとは、私たちが信者になれるかどうかということだけだ。私自身は『時かけ』から細田ファンであったが、本作を観てちょっと変わった。

映画のなかでたった1つ私が感心したのは、「学び」の描き方がとても上手かったということだ。九太は長らくバケモノの世界で暮らし17歳になるのだが、今度は偶然に人間界に戻ってしまう。そこで同年代の少女と出会い、勉強を教わりながら大学を目指すようになる。この過程には割と時間をかけているし、最後まで引っ張る重要な要素なのだが、「世界を広げる=学ぶ」という本質をまったく説教くさくなく、巧みに描いていた。「なぜ勉強するの?」という子供の厄介な質問に対する優秀な教材になっている。もう1点、2つの世界を行き来する物語では、いずれどちらかに縛り付けられる展開が多い(前作におけるオオカミこどもの"雨"がそうであった)が、本作では希望に満ちた決着にしているのもよかった。蓮なのか九太なのか曖昧にせず、きちんと生きる目的と居場所を用意して話を終えていることに、細田監督の人間的な優しさを感じた。まぁ、刀にするしかないわなぁ、とは思うけれど。

| 映画レビュー | 23:14 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

> invisibleAさん

ついつい辛口気味になってしまいました(汗)。
でもフォローしている通り、本当に無敵の娯楽作だと思います。

素直に受け入れずブツブツと呟いてしまうのは
たぶん私たちが歳を取りすぎたのか、身も蓋もない言い方をすれば汚れちまったのかもしれませんね。きっと。

| pltr0 | 2015/08/10 21:08 | URL | ≫ EDIT

細田監督の4作品のなかでは一番つまらなかった、というところを含めて全面的に同意です。
ただ、面白い<だけ>だというのが初回の僕の正直な感想で、細田作品で初めて、BDを買わなくていいかもなと思ったのでした。

2回目の方が1回目より面白く感じたのは、たぶんそれ以外は許さないという感じ方のレールに、初めから乗っているからでしょう。きっと。

| invisibleA | 2015/08/10 00:38 | URL | ≫ EDIT















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