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SPOTLIGHT(邦題:スポットライト 世紀のスクープ)



2016年のアカデミー作品賞を受賞した、『スポットライト 世紀のスクープ』を観てきました。
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映画文化が成熟している証なのかもしれない

実在する地方紙The Boston Globeの取材チームがカトリック司祭らの未成年者性的虐待および教会ぐるみの隠蔽を暴いた実話に基づく映画である。物語は新編集長が赴任するところから始まり、新編集長がこの事件を深く掘り下げるよう指示、当初は多少のやらされている感を持って取材をしていたチームが事態の深刻さと巧妙な隠蔽工作に気付いていき、そして第一報の記事が世に出る朝までが描かれる。しかし、何というあっさりとした味付け。熱心な映画ファンでなければ、ほぼ顔と名前が一致しないであろう地味すぎるキャスティング。邦題には「世紀のスクープ」と副題が付いているが、どこが"世紀の"なのか直感的に分からない。普通なら、上映回数は1日2-3回程度、何の話題にもならず公開2-3週でひっそりと消える類いの一本だ。アカデミー作品賞をとっても似たような状況であるような気もするが。

教会を追い詰めていくなかで、チームの一員であるマイク・レゼンデスは夜に同僚のレイチェルの自宅を訪ね、自分のなかの葛藤を漏らす。いわく、自分は無宗教者だが、もっと歳をとったら教会通いをするようになると自然と考えていたと。このマイクの告白が意外と本作の核心を突いているのではないかと思う。幼い頃は極当然の習慣として地域の教会に通い、食事の前には神に感謝を述べ、日常会話でしょっちゅう「神」のみならず「ジーザス」と口にする。私も米国で暮らしていた時分、"♪Yes Jesus loves me, yes Jesus loves me, for the bible tells me so(そうだ、イエスは私を愛してくださる、愛してくださるのだ。聖書にそう書いてあるもの)"と、何の疑いもなく、それどころか割と真剣にそう信じて歌っていた記憶がある。本作の核心は、自分の生活のなかに根付いていたもの、無意識に信じたいと思っていたものが脆く崩れていくことの葛藤にあるのではないかと思う。そう考えると、冒頭には赴任した新編集長が初のユダヤ人であることに言及する短い会話が挟まれていたり、一貫して被害者側に立つ弁護士とマイクが夕食を摂りながら交わす会話の内容など、米国の小さなコミュニティに潜むセンシティブな問題が随所に散りばめられていた。文化の違う私たち日本人には、完全には共感できない領域だ。しかし一方で、信じていた価値観が崩れていくとき、大抵それは静かであっけないものであることは、自分の体験からも分かる。現実とは案外そういうものだ。

抑制が効いており、リアリティのある脚本がともかく素晴らしかった。静と動を巧く使い分けているマーク・ラファロの演技は間違いなく助演男優賞ノミネートに値する。GW中に観る映画としては少々パンチが弱いのであまりお勧めできないかもしれないが、しっかりした脚本を味のある俳優たちが演じた渋い一本である。ハリウッドは湯水のように金を使って理解し難い阿呆な映画を平然と作ったりするし、アカデミー賞は確かに白人優遇の傾向があるのも否定できない。しかし、時折こういう作品が配給され、作品賞をとってしまう懐の広さがある。映画文化が成熟している証拠のひとつであると思う。

| 映画レビュー | 23:08 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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