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Listen to His Voice: HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2010-2011 -Documentary-

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K-7 + FA31mm F1.8Ltd


旅の目的:ライブを観に行くこと

もう何度も書いていることですが、私たちが旅に出るとき、大抵の場合テーマというか目的があります。
逆に言えば、私たちは"かもめ食堂的"には旅行をしません。
明確なテーマが存在し、明確なスケジュールが組まれ、そしてどこに行くにも必ず1泊2日しかしません。
私たちは、と云うのは、少々事実と違うか。奥さんは、1泊以上のブラリ旅もよいのでは、と言っています。

そういうわけで、盛岡記事の最後は、今回の旅行の目的。秦基博くんのライブについて。


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GF-1 + LUMIX G 20mm F1.7


秦くん(ちなみに、巷では「ハタ坊」と呼ばれている)がデビューしたとき、同じ事務所の先輩である山崎まさよし氏が「その声に嫉妬する」というようなコメントを出したと記憶している。実際、彼のデビューに用意された(いまからすると少々気恥ずかしい)キャッチフレーズ、"鋼と硝子でできた声"というのは、あながち大袈裟ではない。私はファーストアルバムが出た頃に知って、「」という曲に衝撃を受けた。恋する気持ちを魚の鱗に喩える言語感覚、叙情的なメロディ、一度耳にすると離れない歌声。まるで、辛みや旨味、甘みなど幾重の味わいが組み合わさっているのに、食べてみると少しもクドくなくて心地よく入っていく、ぴょんぴょん舎の盛岡冷麺のような味わいだ。オーガスタ(彼の所属事務所)は、またもやオオモノを釣ってきたと思ったものだ。

それでも、しばらくの間は"iPodでたまに聴く人"に過ぎなかった。その当時、それ以上に熱心に肩入れしていたアーティストが居たし、取っ替え引っ替え聴くというより気に入ったらそれしか聴かないという性格なので。そうこうしているうちに、『僕らの音楽』などの番組が積極的に彼をプロモートするようになり、久々に引っ張り出したアルバムを聴いて、再熱。BEST OF GREEN MIND '09というライブアルバムを経て、ライブに行ってみたいと決意。こうなると、私の行動は極めて早い。

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わざわざ盛岡まで出向いたのは、盛岡会場しかチケットが取れなかったためだ。前日の積雪のためにコンサートがどうなるか心配ではあったが、会場に行ったら満員御礼、チケットはすべてソールドアウトしていた。これまでそれなりの数のアーティストの、それなりの数のコンサートに足を運んできたけれど、ここまでオーディエンスが多種多様なのには驚いた(場所柄もあるのだろうか?)。男女比は極端な偏りがなく、年齢層も幅広い。若いカップルも居れば、熟年のご夫婦も居られたし、お子さんを連れたお母さんの姿や、おひとりさまの男性や女性も多く居た。みんな、秦くんの歌を聴きに来たのだ。

幕が上がり、最初に歌ったのは奇しくも私がニューアルバムで一等好きな「今日もきっと」だった。こういう気持ちを、若者は「アガる」というのだろう。少し声が出ていないような気もするが、鋼と硝子で出来た声は実際もCDと寸分違わず。まるで光原社の可否館で出されたミルクティのように、力強く、温かく、そして繊細だった。

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秦くんのライブを一言で表すならば、「仲間力」と集約しよう。こんなにサポートメンバーと仲良しな雰囲気を醸し出しているライブは初めてだった。秦くんを含めたメンバーが地べたに這って演奏してみたり、それぞれの独壇場演奏のパートでは他のメンバーが車座になって聴いていたり、最後の締めのMCではギターの久保田氏が秦くんに対し何だか先生みたいに労いのコメントをしたり。しかし、そういうアマチュア臭い感じに萎えるのは、早計だ。演奏はもちろんのこと、ライブ運びも実に巧みなのだ。

アップテンポな曲のパート(「透明だった世界「パレードパレード」など)、スローテンポな曲のパート(「猿みたいにキスをする」「Selva」など)としっかり分けて、緩急をつけている。こういうことって、結構大切ではないかと思う。誰もが熱狂的なファンと限らないから、初めてのお客さんでも"ライブのノリ”を掴めるような解りやすいメリハリを作るのは親切だ。まぁ、これは個人的に、最初から最後まで、立ちっぱなしで声を上げて手拍子して、まるでそういうのをしなければならないような空気になるライブが嫌いなだけだからかもしれないけれど。しかし、スローテンポ・パートで、自分も立ちっぱなしの演奏だと疲れるからしばしみんなで座りましょうよと自ら着座を促す秦くんの優しさには、誰だって有り難やーと拝まずにはいられまい。

何だか少々強引な理由づけで「盛岡への恩返し」として、弾き語りで歌ってくれた「」は、だから全員が座って静かに自分の世界に没入できた。私たちの隣には、若いとは云えないけれどとても美しい女性が一人で聴きに来ていたが、この曲が終わった後に少し涙しているような仕草だった。秦くんの場合、弾き語りは出し物や余興ではないのだと、つくづく感心した。これは、去年アコースティックライブを敢行した成果なのだろう。この頃には、完全にコントロールされたCDの歌声など金輪際聴く気になれんわい、というほどに、秦くんが其所に居てその場で放つ声の美しさに鳥肌が立つ思いだった。私たちは少しも満腹にならず、饗される曲たちを、容易く次から次へと平らげては、次を待っていた。そう、東家本店でわんこそばの椀を積み重ねたように。

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アンコールもきっちり盛り上げ、2時間以上に及ぶライブは幕を降ろした。朴訥な話し方で一生懸命MCをし、最後は深々とお辞儀をして去って行った。盛岡の夜は寒かったけれど、会場内はほんわかと穏やかで温かい空気に包まれていた。それぞれの帰途に就く人々でごった返す会場の仄かな熱気は、少し甘く、そして「ハートにじんわり溢れる」ようだった。喩えるならば、岩手市街をさんざん歩き回った後に食べた、茶廊 車門のフルーツあんみつのように。

* * * * *

盛岡旅行記 おしまい

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